学 生時代にこの仕事を始めて、気が付けば三十年が経ちました。
その頃の自分を思い返せば、恥ずかしくなるほどに授業は下手くそで、情熱や熱意だけで突っ走っていました。
それでも自分を信頼して付いてきてくれる子ども達の存在に「人生を懸けるに相応しいと思えるやりがい」を感じ、いただいていた銀行の内定を辞退し、親族の反対も押し切って、「この業界で生きていこう。」と決意しました。
当時、私をかわいがってくれていたある有名な予備校講師にご挨拶に伺った際に、忘れられない言葉をかけていただきました。
「榎本さん、この世界で生きていくと決めたのなら、まず問題集を背の高さまで解きなさい。」
この一言は、自分がいかに未熟な状態でこの世界に飛び込もうとしているのか気づかせてくれました。そして、本当の意味での覚悟を決めさせてくれました。先生はまた、何故か「強い塾を支える柱とは何なのか」ということも話してくださいました。今思えば、私がいずれ独立することを悟っていらっしゃったのかもしれません。
その後は大手進学塾の社員として、授業だけでなく、教室やエリアの運営をし、新規事業を立ち上げ、困難な状況も幾度となく経験する機会を得る中で、いつしか大きな責任を持つ立場となっていました。 それはまさに激務の日々でありながら、運営や経営を学ばせていただいた貴重な日々でした。
し かし、「もっと子ども達と向き合って面倒を見たい。保護者様の思いに誠実に応えたい。」
そんな思いをいつも心の奥底に抱えていました。ただ、その思いに忠実になろうとすれば、物理的に時間が足りないという現実がありました。
「教室の職員たちが、もっと純粋に子ども達や保護者様のことを思い、一生懸命に向き合いながら授業に邁進する塾をつくりたい」
そんな思いが溢れ出たとき、その志を分かち合える仲間たちと共に始まったのが哲志会です。
2015年の開校以来、素晴らしい子ども達との出会いに恵まれ、ご理解のある保護者様に支えられてきました。まだ道半ばではありますが、それでもありがたいことに、毎年、多くの学年が満席になる教室になりました。
教室を卒業した子ども達もよく遊びに来てくれます。合格実績も年による濃淡はありますが、地域No.1となれる年度も出てきました。
今 、教育の世界にも他の業種と同様にICTの波が押し寄せてきています。
もちろん、そうした世の中の流れには経営者として敏感でなければいけませんし、時代の変化に対応するためのハード面の設備拡充も、創業以来続けています。
しかし、哲志会が目指す頂はあくまでも、教室の職員たちが持てる力の全てを子ども達に注ぎ、授業準備に時間を掛け、子ども達の変化に気を配り、保護者様の思いをくみ取れる塾であり続けることです。
私たちは大きな組織ではなく、故に様々な部分で発展途上であることもまた事実です。しかし、だからこそ、細部までこだわった丁寧な教室づくりができます。
子ども達や保護者様と並走させていただく中で、時に悩み、考えながら、全ての職員が子ども達と共に学び・気づき・成長していく。そうして 一つ一つの教室のあるべき姿を、夢中になって追い求めているうちに、気づくとより多くの地域、より多くの子ども達に哲志会の輪の広がりができ、私塾としても発展している。
これが私の目指す哲志会のありかたです。
2022年6月
代表取締役 榎本 哲章